「魚が大気汚染から脳を守ってくれる?」というタイトルの研究が、オンライン医学ジャーナルの「American Academy of Neurology」(2020年7月15日付)に掲載された。
大気汚染物質は、肺だけではなく脳にもダメージを与え、認知症などの原因にもなるとされている。今回の研究によると、大気汚染のレベルが高い地域に住む高齢女性のうち、「オメガ3脂肪酸※」が血液中に少ししかない人たちは、脳の萎縮が比較的大きいことがわかったという。オメガ3脂肪酸は魚介類に多く含まれるが、焼いた魚や貝、甲殻類、そしてツナ缶やを週に90-180g食べている人は、脳の萎縮が少ない結果となったという。(油で揚げるとオメガ3脂肪酸が壊れるため、揚げ物は除外。)
この研究によると、脳の健康に欠かせないオメガ3脂肪酸は、脳の炎症や老化を防いだり、鉛や水銀による脳へのダメージを減らすことはわかっていたが、その他の大気汚染物質による脳へのダメージからも守ってくれるかもしれない可能性が出てきたという。
しかし、魚を食べることと脳の大きさに何かしらの関係があることがわかっただけで、魚を食べることで脳の大きさを維持できるという因果関係を証明したわけではないとのこと。また、研究対象者は白人の高齢女性のみであるため、一般化するには更なる研究が必要であるようだ。
※オメガ3脂肪酸とは、不飽和脂肪酸の分類の一つで全身の細胞膜に存在する。代表的なオメガ3脂肪酸は、αリノレン酸、EPA (エイコサペンタン酸)、DHA (ドコサヘキサエン酸) 。αリノレン酸は亜麻仁油やくるみやチアシードなどの植物に含まれ、体内でEPAに変換される。EPAやDHAは魚介類、主に青魚に含まれる。
オメガ3脂肪酸の効果は?
魚を食べると、大気汚染物質によって脳が萎縮するのを守ってくれるのかどうかはまだ明らかではないものの、魚介類に含まれるオメガ3脂肪酸が健康に欠かせないのは揺るがない事実!さて、どんな効果があるのでしょう?
- 抗がん作用、関節炎などの痛みを緩和
- 中性脂肪や血圧を下げる
- 血糖値コントロールの改善
- 月経痛の緩和
- 睡眠の質の改善
- 様々な病気の原因となる慢性的な炎症の調整と緩和
- 脳機能の活性化:神経細胞膜の柔軟性がアップして血流が良くなり、脳への酸素供給を促進
魚選びで気をつけたいこと
魚介類で気をつけたいのは、水銀。魚介の水銀が身体に溜まると、免疫システムダウン、消化器系の問題、脳のダメージ(記憶力の低下、混乱、うつ等)、皮膚の痒みや皮膚炎、関節炎、疲労感などの原因にも。
水銀などの有害物質は海底に溜まりやすいこと、そして大きな魚の方が高濃度の有害物質を含む可能性が高いことから、マグロ、鯨、深海魚などは週に2回以内にした方がいいでしょう。
魚には、ビタミンDも多く含まれ、免疫力アップや自己免疫疾患やアレルギー疾患の緩和などの効能も期待できます。さらに、ビタミンDとカルシウムを一緒に摂るとカルシウムの吸収率が上がるので、乳製品、濃い緑の野菜、種実類などを一緒に摂取すると、骨や歯の健康維持や改善に役立つのでおすすめです。
参考文献:https://www.aan.com/PressRoom/Home/PressRelease/3805